アルコール依存症からの回復

アルコール依存症からの回復のステップ

ビッグブック~AAの伝統~

1940年代になって
ビルは同じような団体が
既に1800年代に存在していたことを知った。
その団体はワシントニアンと呼ばれていた。
A.A.に似た運動がかつて存在したが
次第に消えていっていたという事実は
A.A. の将来についての厄介な暗示を示していた。


ワシントニアンが崩壊した原因は
アルコール依存症からの回復という当初の目的を外れて
奴隷制度や禁酒運動など
日々のさまざまな問題へと多岐化して
焦点を失ったからだったといわれる。
同じような運命を恐れたため
ビルは
何がA.A.であって何がA.A.でないかを定義する
ガイドラインを確立しなければならないと考え始めた。
そして
「12の伝統」として記述された。


伝統はA.A.を次のようなものであると説明している。


AAのメンバーになるために必要なことはただ一つ
飲酒をやめたいという願いだけである。


会費もないし、料金を払う必要もない。
私たちは自分たちの献金だけで自立している。


AAはどのような宗教、宗派、政党、組織
団体にも縛られていない。


また
どのような論争や運動にも参加せず、支持も反対もしない。


公共のレベルにおいては無名でいる・・・等々


ビルは個人的な知名度を嫌う人物ではなかったが
「公共における無名」の原則がA.A.が推進する
最も素晴らしい「崇高な原則」であると述べるようになった。


彼がビル・ウィルソンではなく
ファミリーネームをイニシャル化した
ビル・W.で知られるのはこのためである。


ビルは
エール大学からの名誉学位を含む多数の栄誉を辞退し
そして彼自身が雑誌の表紙に載ることを許さなかった。



アルコホーリクス・アノニマスは
現在メンバーである仲間の人生にとって
悲惨さと幸福を
生と死を
分けるものであった。
もちろん同じことは
まだAAにたどり着いていない
数えきれないほどのアルコホーリクについてもいえる。


だからAAは
他のどんな共同体にもまして
途切れることなのない回復の連鎖と
永遠の一体性を
どんなことをしても守っていかなければならない
必要に迫られている。


私たちアルコホーリクは
共に生き、共に活動し
お互いに支え合っていかなければならない。
そして
共同体として私たちをとりまく社会との関係を
築きあげていかなければならない。
さもないと私たちのほとんどは
孤独な死を迎える事になる。


AAの集まりは
感情のダイナマイトをかかえている。
過敏な感情で
AAはこっぱみじんになる可能性がある。
飲んでいた頃の私たちが
一発触発の状態だったのはもちろんだが
しらふになっている今もなお
ドライドランクや感情のギザギザによって
こっぱみじんになるのだろうか?


「AAがバラバラにならないで生き続けていくためには
どうしたらいいのだろう」
あるいは
「AAはどうしたら最も効率よく活動できるだろうか」
という差し迫っている疑問へのいちばんの答えが
アルコホーリクス・アノニマスの「12の伝統」である。


1945年
手紙の往復による
グループの問題の解決は
本部にとってかなりたいへんな仕事になっていた。
本部に届く手紙の山はファイルを満杯にした。


アルコホーリクス・アノニマスの12の伝統の
基本的な考えは
このような膨大な手紙の交換から
直接生まれたものである。


アルコホーリクス・アノニマスの12の伝統は
『グレープバイン』の1946年5月号・6月号に
いわゆる「長文のもの」として初めて発表された。


1946年
12の伝統が出版される


12の伝統は
どれ一つとっても謙遜の実践だった。
それによって
日常のAAの活動のなかで私たちが守られるのだ。
もしAAが本当に12の伝統に導かれていくなら
政治や宗教、金銭
あるいは大物になりたがるオールドタイマーによって
分裂させられることはないだろう。
公共における無名の原則があれば
誰もAAを
個人の利益のために利用することができないのは確かだ。


AAのアノニミティは
単に恥や汚名からアルコホーリクを
守るためにあるのではない。
もっと深い目的は
私たちの愚かな自我がAAを犠牲にして
金銭や世間の名声を
狂ったように追い求めることを防ぐことなのだ。


1947年
伝統「長文のもの」を伝統「短いかたち」に要約した。
グレープバインに
この新しくなった伝統「短いかたち」が掲載され
AAメンバーの間に伝統に関する意識が広まった。


1950年
クリーブランドで開催された
第一回国際コンベンションにおいて
12の伝統が採択された。


1953年
AAはその霊的な原理を維持する為
「最小限度の組織しか必要としない」から
AAそのものは
「決して組織化されるべきでない」とされた。


1953年6月
12のステップと12の伝統が発刊される



私たちのAAでの経験は、次のことを教えている。


1.各メンバーは
  アルコホーリクス・アノニマスという大きな全体の一部である。
  AAが生き長らえなければ
  私たちの多くが確実に生命を失うことになるだろう。
  したがって私たちの全体の福利がまず優先される。
  しかし個人の福利がすぐそのあとに続く。


優先されなければならないのは
全体の福利である。
個人の回復はAAの一体性にかかっている。


2.私たちのグループの目的のための最高の権威はただ一つ
  グループの良心のなかに自分を現される、愛の神である。


私たちのグループの目的のための最高の権威はただ一つ
グループの良心のなかに自分を現される、愛の神である。
私たちのリーダーは奉仕を任されたしもべであって
支配はしない。
  
3.私たちの共同体は
  アルコホリズムに苦しむ人すべてを含むべきであり
  回復したいと願っている人は
  どんな人であっても拒んではならない。
  AAのメンバーであるためには
  金のあるなしを問われることはなく
  また
  何らかの規則に服従する必要もない。
  飲まずに生きたいと願うアルコホーリクが二、三人集まれば
  グループとしてAA以外のどんな団体にも加入していないかぎり
  自分たちのことをAAグループと名乗ることができる。


AAのメンバーになるために必要なことはただ一つ
飲酒をやめたいという願いだけである。


4.グループ内の問題について、各AAグループは
  何かの権威に対してではなく
  自分たちの良心に対して責任を負うものである。
  しかしあるグループの計画や行動が
  近くにあるグループの福利に関係する場合は
  それらのグループは相談を受けるのが当然である。
  またどのグループも、各地の委員会も、あるいは個人も
  AA全体に大きくかかわるような行動をとろうとする場合は
  まず常任理事会にはかるべきである。
  その場合、私たち全体の福利が最優先される。


各グループの主体性は
他のグループまたはAA全体に影響を及ぼす事柄を除いて
尊重されるべきである。


5.アルコホーリクス・アノニマスの各グループは
  いま苦しんでいるアルコホーリクに
  メッセージを運ぶことだけを本来の目的とした
  霊的共同体であるべきである。


各グループの本来の目的はただ一つ
いま苦しんでいるアルコホーリクにメッセージを運ぶことである。


6.金銭、財産、権威の問題は
  ともすると私たちを
  本来の霊的目的からいとも簡単にそれさせる可能性がある。
  だから私たちは
  純粋にAAのためだけに用いられる財産は
  すべて別個に法人化して管理し
  物質的なことと霊的なことを分けるべきだと考える。
  AAグループとしては決して事業に携わってはならない。
  またAAメンバーの回復の助けになるクラブや病院などは
  多くの資産や管理が必要であるため
  別個の組織として設立し
  必要ならばグループがいつでも処分できるようにすべきである。
  したがってそうした施設はAAの名称を用いてはならない。
  管理も
  その仕事を金銭的に支えている人たちだけで行なうべきである。
  クラブの管理者は、AAメンバーがふつう望ましい。
  しかし病院や回復のための施設は
  医療面からの指導を受けながら
  AAメンバー以外の者が運営するほうがうまくいく。
  AAグループは誰とでも協力するが
  しかしその協力関係は
  明らかな事実であれ、暗黙のうちであれ
  帰属したり、保証をし合ったりするところまではいくべきでない。
  AAグループは他の何ものにも拘束されてはならない。


AAグループはどのような関連施設や外部の事業にも
その活動を支持したり、資金を提供したり
AAの名前を貸したりすべきではない。
金銭や財産、名声によって
私たちが
AAの本来の目的から外れてしまわないようにするためである。


7.AAグループは
  そのメンバーによる自発的な献金だけで完全に自立すべきである。
  グループ、あるいはクラブ、病院、その他の外部の機関が
  アルコホーリクス・アノニマスの名前を使用して
  募金を依頼することは、非常に危険であり
  またどこからのものであれ、多額の贈り物や
  何らかの義務が生じるような寄付を受けることは賢明ではない。
  各グループは自立を早急に達成すべきであると考える。
  また慎重に設定された予備金の範囲を越えて
  明らかな目的もないままに蓄積されるAAの資金にも
  私たちは大きな懸念を抱いている。
  財産、金銭、権威をめぐっての無益な論争ほど
  私たちの霊的遺産を確実に破壊するものはないことを
  経験がしばしば戒めているからだ。


すべてのAAグループは
外部からの寄付を辞退して、完全に自立すべきである。


8.アルコホーリクス・アノニマスは
  あくまでも職業化されずアマチュアでなければならない。
  ここでいう職業とは
  料金を取って、あるいは給与をもらって
  アルコホーリクをカウンセリングすることをいう。
  しかし私たちのサービスのために人を雇う必要のある場合
  アルコホーリクを雇うことができる。
  これに対してはそれ相応の報酬が支払われてよい。
  しかし私たちが行う通常のAAの「十二番目のステップ活動」は
  常に無償でなければならない。


アルコホーリクス・アノニマスは
あくまでも職業化されずアマチュアでなければならない。
ただ
サービスセンターのようなところでは
専従の職員を雇うことができる。


9.各AAグループは
  組織化を必要最小限にとどめるべきである。
  リーダーも交代制にするのがいちばんよい。
  小さなグループの場合、セクレタリー(実務担当)を選ぶ。
  大きなグループは任期制の委員会を
  都市部の大規模なグループは
  セントラル/インターグループ(オフィス)委員会を持って
  常勤の実務担当者を雇用する場合が多い。
  常任理事会の常任理事は事実上
  AAの全体サービスの委員である。
  彼らはAAの伝統の番人であり
  AAメンバーの自発的な献金の受け取り人である。
  ニューヨークにある私たちのGSOは
  この献金によって維持されている。
  GSOはAA全体の広報活動を行なう権限をグループに託され
  私たちにとって大切な機関誌「グレープバイン」が
  本来の形で発行されるよう監修する。
  こうした代表者たちはすべて、奉仕の精神に導かれている。
  AAの真のリーダーとは
  信頼され、経験豊かな
  全体のためのしもべにほかならないからである。
  彼らはその肩書きによってどのような権力も得ることはなく
  また支配もしない。
  彼らが役立っているかどうかの判断の手がかりは
  全般に尊敬を受けているかどうかである。


AAそのものは決して組織化されるべきではない。
だが
グループやメンバーに対して直接責任を担うサービス機関や
委員会を設けることはできる。


10.どのAAグループもメンバーも
   AAを巻き込むような形で
   外部の論争に対して意見を述べてはならない。
   特に政治や禁酒運動、宗教の宗派的問題には立ち入らない。
   アルコホーリクス・アノニマスのグループは
   だれに対しても反対の立場を取らない。
   そういう問題についてはどのような意見も表明しない。


アルコホーリクス・アノニマスは
外部の問題に意見を持たない。
したがって
AAの名前は決して公の論争では引き合いに出されない。


11.私たちの広報活動の特徴は、個人名を伏せた無名性にある。
   AAはセンセーショナルな宣伝を避けるべきだと考える。
   AAメンバーとして名前や写真を
   電波、映像、活字にのせるべきではない。
   私たちの広報活動は宣伝でなく
   ひきつける魅力に基づくべきである。
   AAのことを自画自賛する必要は少しもない。
   AAの友人たちに推奨してもらうほうがよいと私たちは考える。


私たちの広報活動は
宣伝よりもひきつける魅力に基づくものであり
活字、電波、映像の分野では
私たちはつねに個人名を伏せる必要がある。


12.最後に、アルコホーリクス・アノニマスの私たちは
   無名であることには
   霊的にはかり知れない重要性があると信じている。
   それは個人よりも原理が優先していること
   本物の謙遜が実行されなくてはならないことを
   いつも私たちの心にとどめてくれる。
   それは
   私たちが受けた偉大な恵みに決して甘んじることなく
   私たちすべての者を導く神への感謝の思いのうちに
   永遠に生きるためである。


無名であることは
私たちの伝統全体の霊的な基礎である。
それは各個人よりも原理を優先すべきことを
つねに私たちに思い起こさせるものである。


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